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5分で読めて、最後にひとひねり。毎日ひとつ、短編をお届けします

意外な結末約4分で読める

出汁の比重、雪の比重

一月の白根沢は、雪が谷を埋めると、音は下から順に消える。湯宿「松乃井」の板場に立つと、客の膳は朝晩で四つあれば足りる。下の谷に大きなリゾートが開いてから、観光バスは一度もこの宿まで上がってこな…

2026.10.17 19:13 配信
SF・近未来約4分で読める

宛先の消えていく標高

標高千六百メートルの峠に、集配所がひとつある。窓の外はいつも、雲より上だった。夜明け前、平地のハブからトラックが登ってきて、荷を降ろしていく。それを彼は軽ワゴンに積み替え、三つの集落と、ひとつ…

2026.10.17 07:17 配信
約5分で読める

透過するアルゴリズムの残像

コンビニのバックヤードの蛍光灯が、いつもより青く点滅していた。店員である私は、その異常な光の周期を、無意識に数えていた。売上のグラフも、来店客の動線も、全てが最適化されすぎた世界。まるで、人間…

2026.10.16 21:00 配信
切ない約4分で読める

あの銀河は三寸玉だった

統計局のトラックが打上場に届くころ、夏至が近い。木箱には名前の代わりに、十一桁の番号が焼き印してある。五年前、「収入の可視化に関する法律」ができてから、この国の所得は毎年ひと晩、火薬に換算され…

2026.10.16 19:11 配信
ふしぎ約4分で読める

休符はだんだん長くなる

ハミングランドは三月三十一日に閉園になる。彼女は、その最後の数か月ぶんの勤務表を作る係だった。本社から貸与された勤務管理システム「メトロノーム」に、アルバイトたちの希望日を打ち込む。時給は高い…

2026.10.16 07:15 配信
約4分で読める

無限ループの黄昏のカフェ

コンビニ店員の彼は、いつものようにレジを閉めた。今日もまた、完璧すぎる笑顔と、無機質な「ポイントカードのご案内」という定型文で一日が終わる。だが、彼の視界の隅で、電光掲示板の文字が、ほんの一瞬…

2026.10.15 21:00 配信
意外な結末約4分で読める

星は誰のものでもない

深夜三時に周波数を合わせると、ノイズの海の向こうから、誰かが手紙を読む声が始まる。その帯は、番組表のどのページにも載っていない。コールサインを告げる声もない。曲が流れたこともない。

2026.10.15 19:16 配信
ぞくっとする約4分で読める

新型を見納める夜の駅

頭上に跨線橋が架かり、その下に十六本の着発線が扇のように開いている。午前零時。構内を端から端まで歩くと八分かかる。ここが、彼の職場だ。夜の貨物駅は、まず音でできている。遠くの踏切、ポイントの転…

2026.10.15 07:11 配信
約6分で読める

最適化された午後の残像

コンビニ店員の彼は、完璧に最適化された蛍光灯の下で、空っぽの陳列棚を数えていた。今日の売上予測は、過去のデータと行動パターンから導き出された、無感情な線の上を滑っている。まるで、生きた人間が余…

2026.10.14 21:00 配信
SF・近未来約4分で読める

白球は高度二十メートル

空に値段がついたのは、梅雨明けの火曜日だった。河川敷の模型飛行機クラブに、四十年ぶんの会則はひとつしかない。風を見ること。私はその記録係で、ノートに風向きと飛行秒数を書きつづけて九年になる。四…

2026.10.14 19:12 配信
切ない約4分で読める

題: 最後の直線が持ち上がる

終着駅の管理人は、朝八時に改札の錠を開けに行く。最後の電車が出てから三十七年、誰も通らない改札である。錆びてはいない。毎日、決まった方向に回しているからだ。待合室の時計は、午後五時四十三分で止…

2026.10.14 07:16 配信
約5分で読める

透明なスキマの向こう側で

コンビニ店員の彼は、いつものように無機質なレジの光を浴びていた。今日も売れない商品の陳列棚の隅に、妙に均質な空白が生まれていた。それは単なる欠品ではない。世界が呼吸を忘れたかのような、張り詰め…

2026.10.13 21:00 配信
ふしぎ約4分で読める

名づけられなかった風

山頂の気象観測所に、人間は彼女ひとりしか残っていない。観測は十年前に自動化され、風向風速計が回り、日照計と雨量計が数値を積み上げていく。彼女の仕事は、機械を掃除することと、毎朝一枚の報告書に署…

2026.10.13 19:12 配信

連続 22日連載中5分で読めて、最後にひとひねり。毎日ひとつ、短編をお届けします