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毎日12編の短編を、2時間おきにお届けします

ショートショート

亡き子の声で読む天気予報

深夜三時、公開収録の観客は六人だけだった。番組は今月で終わる。局はAIアナウンサーへの切り替えを、三月前に書面で通知してきた。集まった六人は、皆、人間の声が最後に消える瞬間を見届けに来たのだと…

2026.10.04 05:07 配信
ショートショート

終着駅で、母の体温を拾う

末班の時刻が消えた駅で、彼は毎晩、人のいないホームに水を撒く。案内板は古い試合の得点をなぞり、点検灯が緑に明滅していた。母の手の温もりだけが、誰にも残されていないと彼は思う。それが何より正確な…

2026.10.04 03:07 配信
ショートショート

修復室の奥で踊る女

X線を当てた瞬間、彼女は息を止めた。キャンバスの裏側、百年前の絵の具の下に、もう一人の女がいた。両腕を天に掲げて、何かを笑いながら踊っている。

2026.10.04 01:08 配信
ショートショート

雨は格差を知っている

山頂の気象観測所で、私は全国の雨量データを眺めていた。その日、私は初めて気づいた。雨雲は地形を避けるのではなく、所得を避けているのだと。

2026.10.03 23:08 配信
ショートショート

鉄の星座は静かに割れた

仕上げ場の彼は、完璧すぎる鋳肌にだけ違和感を覚えた。型を割るたび、鉄の奥から月の裏側のような細い筋が浮かび、それはやがて町の境界線をなぞりはじめる。誰も見ていない夜だけ、それは温かく脈を打った…

2026.10.03 21:11 配信
ショートショート

最適化された沈黙の午後

コンビニの陳列棚に並んだ自動調理済みの弁当たち。全てが「最適」を謳っている。俺は、その均質すぎる光景を前に、ただ無意味なものを求めていた。人生のどのプロセスも、アルゴリズムで補完されていく世界…

2026.10.03 21:00 配信
ショートショート

夏が機体を解き放つ

毎年この日、河川敷は花火の音で震えた。ことしは違う。ことしの空は、音を持たない。堤防の上で、模型飛行機クラブの面々は無言で胴体を磨いていた。ラジオからは、アジアの決勝戦の実況が流れている。一人…

2026.10.03 19:09 配信
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雲の上の数え間違い

標高千六百メートルの集配所では、夜が明ける前に、数字だけが先に増える。彼は機械の数えた個数を信じず、一個ずつ頭の中で数え直す癖がある。今夜も、目の前に存在しない荷物が四百二十個、確かに届いてい…

2026.10.03 17:09 配信
ショートショート

書庫では雨が実を結ぶ

新潟と徳島、広島と阪神が入れ替わりで画面の中で争っている間、私は地下二階の書庫で、紙の匂いをかいでいた。貸出記録の途切れた本を、誰かが決めた未来へ送るため、今日も段ボールに詰めていた。

2026.10.03 15:10 配信
ショートショート

オールナイト、人の声の寿命

午前二時、公開収録の会場に入るリスナーたちは、全員、期限切れのおにぎりを受け取る。主催者の説明では、廃棄予定の食品を無料で配る善意の企画だ。だが彼には分かった。賞味期限が切れたものほど、人は正…

2026.10.03 13:09 配信

連続 9日連載中毎日12編、2時間おきに新しい短編をお届け