留置線に雪が降りはじめる
深夜の貨物駅。彼の仕事は、監視画面に赤い点が出ないかを見続けることだ。仕分けは自動で済む。赤い点が出るのは、月に一度あるかないか。原因は、天候か、鳥か、人間である。駅舎に残っているのは彼ひとり…
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深夜の貨物駅。彼の仕事は、監視画面に赤い点が出ないかを見続けることだ。仕分けは自動で済む。赤い点が出るのは、月に一度あるかないか。原因は、天候か、鳥か、人間である。駅舎に残っているのは彼ひとり…
コンビニ店員の僕は、レジの画面に表示された「最適購入フロー」を無機質に眺めていた。客が手に取る一つ一つの商品が、AIによって計算された必然の連鎖だ。誰もが、最も効率的な消費のレールの上を歩いて…
末班の時刻が消えた駅で、彼は毎晩、人のいないホームに水を撒く。案内板は古い試合の得点をなぞり、点検灯が緑に明滅していた。母の手の温もりだけが、誰にも残されていないと彼は思う。それが何より正確な…
午前二時、公開収録の会場に入るリスナーたちは、全員、期限切れのおにぎりを受け取る。主催者の説明では、廃棄予定の食品を無料で配る善意の企画だ。だが彼には分かった。賞味期限が切れたものほど、人は正…
島から医療が引き上げられる日は、秋の初めの、風のない朝に決まった。通知は紙の文書ではなく、診療所の端末に届いた。私はそれを読み終えると、裏庭で最後の一本を咥えた。潮の匂いのする空気の中で、火が…
黄砂が駒ヶ岳の稜線を消した夜、温室のガラス穹窿に、砂は雨のように音もなく降り続けていた。屋内の空気は洗われたように澄み、彼女は巡回端末の画面に、開花予測が一斉に書き換わるのを見た。予定より十七…
修復室の彼女の仕事は、壊れた絵を元に戻すことではなかった。壊れた絵を、データが許容するもっとも美しい形へ更新することだった。三ノ宮駅の雑踏の真下、地下二階の窓のない部屋で、百年の嘘に針を入れる…
新造車両は脈動していた。従来型の車体に組み込まれた制御基板が、夜ごと静かに、かつ確かに学習していく。彼は検車灯の下で、その呼吸を確かめるように日記をつけていた。