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5分で読めて、最後にひとひねり。毎日ひとつ、短編をお届けします

ふしぎ

37 STORIES
理屈では割り切れない、不思議な出来事をめぐる短編。説明されないまま残る謎を楽しんでください。
ふしぎ約4分で読める

銭湯はまだ、地下水を孕む

開店前の銭湯で、私は給湯器の死を確認した。業者は三日後と言った。それなのに夜の湯船は四十二度に保たれていた。ボイラーは冷たいまま、湯だけが、地下の誰かに温められているように。

2026.10.04 23:17 配信
ふしぎ約3分で読める

夏の空に、余分な星が降る

山頂の気象観測所は、夏になると人里から最も遠くなる。標高三千メートル、樹林は膝の下で終わり、風だけが泊まりに来る。山下の市が今夜、花火大会を開くという。広報には降水確率ゼロの保証が出ていた。合…

2026.10.04 19:34 配信
ふしぎ約4分で読める

三位の貨車は夜を待つ

午前二時、男は貨物駅のフェンスの前に立った。都心の光の海から離れたここには、鉄と油と、空っぽの音しかない。頭上でコンテナが入れ替わるたび、地面が小さく唸る。男はその唸りを、世界の心拍だと思って…

2026.10.04 17:57 配信
ふしぎ約4分で読める

雲の上で値段をつけない

スキャナーがまた拒否した。標高千六百メートルの集配所の天井は低く、冬の雲が網戸越しに機械の熱を冷やしていく。画面には『再評価待ち』と出る。荷物は誰のものでもないらしい。受取人も差出人も、登録さ…

2026.10.04 15:05 配信
ふしぎ約4分で読める

鋳直す夜は白く冷める

炉の火を落とす前に、私はいつも鋳型に耳を寄せる。鉄は言葉を持たないが、冷める速度で嘘をつく。今夜も外来の屑鉄が、やけに青い炎をあげていた。工場の壁時計は三年早く、社長の約束だけがいつも遅れる。…

2026.10.04 11:09 配信
ふしぎ約4分で読める

インクの海に沈む二つの星

夜勤の彼は、インクの匂いで時間を測った。朝版の香りは薄く、深夜版の香りは濃い。それが唯一、機械が嘘をつかないと証明する方法だった。だがこの夜、印刷機は初めて、同じ香りを二度吐き出した。

2026.10.04 09:04 配信
ふしぎ約3分で読める

修復室の奥で踊る女

X線を当てた瞬間、彼女は息を止めた。キャンバスの裏側、百年前の絵の具の下に、もう一人の女がいた。両腕を天に掲げて、何かを笑いながら踊っている。

2026.10.04 01:08 配信
ふしぎ約4分で読める

雨は格差を知っている

山頂の気象観測所で、私は全国の雨量データを眺めていた。その日、私は初めて気づいた。雨雲は地形を避けるのではなく、所得を避けているのだと。

2026.10.03 23:08 配信
ふしぎ約3分で読める

鉄の星座は静かに割れた

仕上げ場の彼は、完璧すぎる鋳肌にだけ違和感を覚えた。型を割るたび、鉄の奥から月の裏側のような細い筋が浮かび、それはやがて町の境界線をなぞりはじめる。誰も見ていない夜だけ、それは温かく脈を打った…

2026.10.03 21:11 配信
ふしぎ約5分で読める

書庫では雨が実を結ぶ

新潟と徳島、広島と阪神が入れ替わりで画面の中で争っている間、私は地下二階の書庫で、紙の匂いをかいでいた。貸出記録の途切れた本を、誰かが決めた未来へ送るため、今日も段ボールに詰めていた。

2026.10.03 15:10 配信