灯りの消える夜の、海岸
今夜で、僕の仕事がなくなる。灯台は衛星に管理を委ねられ、踏切は無人になった。ラジオでは、遠い国の試合と、記録を追う野球の話が流れている。誰もいなくなる海岸で、最後の灯りが回っている。
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今夜で、僕の仕事がなくなる。灯台は衛星に管理を委ねられ、踏切は無人になった。ラジオでは、遠い国の試合と、記録を追う野球の話が流れている。誰もいなくなる海岸で、最後の灯りが回っている。
閉園が決まってから二十七日目、園に人間は彼ひとりだけになった。正式な役職は「点検兼引き継ぎ担当」。誰も客はいないのに、機械たちは毎朝きっかりな時刻になると目を覚ます。空の観覧車が回り、木馬が浮…
深夜三時、公開収録の観客は六人だけだった。番組は今月で終わる。局はAIアナウンサーへの切り替えを、三月前に書面で通知してきた。集まった六人は、皆、人間の声が最後に消える瞬間を見届けに来たのだと…
コンビニの陳列棚に並んだ自動調理済みの弁当たち。全てが「最適」を謳っている。俺は、その均質すぎる光景を前に、ただ無意味なものを求めていた。人生のどのプロセスも、アルゴリズムで補完されていく世界…
温泉旅館の板前場は、いつも湯の匂いがする。壁にしみて、布にしみて、指の間にまで滲んでいる。ここへ来て三年になるが、私はいまだに、自分の匂いと湯の匂いを区別できない。窓は高い場所にひとつだけあっ…
裏山の養蜂場で一番奥にある巣箱が、初めて空になったのは、秋の宝くじの当選発表が流れた夜だった。蜂は姿を消し、箱の中には蜜だけが満タンに残っていた。まるで、働く者がいなくなったあともシステムだけ…