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5分で読めて、最後にひとひねり。毎日ひとつ、短編をお届けします

切ない

17 STORIES
失われたもの、言えなかったことを静かに描く短編。余韻の長い話を集めました。
切ない約3分で読める

灯りの消える夜の、海岸

今夜で、僕の仕事がなくなる。灯台は衛星に管理を委ねられ、踏切は無人になった。ラジオでは、遠い国の試合と、記録を追う野球の話が流れている。誰もいなくなる海岸で、最後の灯りが回っている。

2026.10.05 03:23 配信
切ない約3分で読める

潮干に精算は来ない

海の家は、夏で飽きるまで稼いで、冬は誰も来ない。俺は閉店した店番として、ここに泊まっている。十二月の浜は金にならない。それでいいと思っていた。あの朝まで。

2026.10.04 13:04 配信
切ない約4分で読める

台風の目に立つ観覧車

閉園が決まってから二十七日目、園に人間は彼ひとりだけになった。正式な役職は「点検兼引き継ぎ担当」。誰も客はいないのに、機械たちは毎朝きっかりな時刻になると目を覚ます。空の観覧車が回り、木馬が浮…

2026.10.04 07:06 配信
切ない約4分で読める

亡き子の声で読む天気予報

深夜三時、公開収録の観客は六人だけだった。番組は今月で終わる。局はAIアナウンサーへの切り替えを、三月前に書面で通知してきた。集まった六人は、皆、人間の声が最後に消える瞬間を見届けに来たのだと…

2026.10.04 05:07 配信
切ない約5分で読める

最適化された沈黙の午後

コンビニの陳列棚に並んだ自動調理済みの弁当たち。全てが「最適」を謳っている。俺は、その均質すぎる光景を前に、ただ無意味なものを求めていた。人生のどのプロセスも、アルゴリズムで補完されていく世界…

2026.10.03 21:00 配信
切ない約3分で読める

偽りの花は眠らない

裏山の養蜂場で、彼は毎朝、巣箱の前に立って、ミツバチがどの方向へ飛んでいくかを確かめていた。山道を下って林檎園へ向かうのが普通だった。その年の春、ミツバチたちは下ではなく、麓の新しい施設の方へ…

2026.10.03 05:04 配信
切ない約5分で読める

湯けむりの聖地が冷める朝

温泉旅館の板前場は、いつも湯の匂いがする。壁にしみて、布にしみて、指の間にまで滲んでいる。ここへ来て三年になるが、私はいまだに、自分の匂いと湯の匂いを区別できない。窓は高い場所にひとつだけあっ…

2026.10.03 01:07 配信
切ない約6分で読める

黄金を集める者の不在

裏山の養蜂場で一番奥にある巣箱が、初めて空になったのは、秋の宝くじの当選発表が流れた夜だった。蜂は姿を消し、箱の中には蜜だけが満タンに残っていた。まるで、働く者がいなくなったあともシステムだけ…

2026.10.01 19:15 配信
切ない約3分で読める

空の所有権が移る朝

日曜の午前、河川敷の模型飛行機クラブの面々が、いつものように堤防に腰を下ろしていた。彼は集金とお茶が仕事の、最年少の見習いである。空を見上げると、雲の下を白い無人機の列が、時刻表通りに通り過ぎ…

2026.10.01 11:06 配信
切ない約4分で読める

観覧車の六つ目の星

遊園地の閉園が決まったのは、三月の初めだった。最後の日、観覧車は故障のために回らなかった。乗客の誰も文句を言わなかった。みんな、携帯電話の画面の中で、すでに別の場所に行っていた。

2026.09.30 17:09 配信