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5分で読めて、最後にひとひねり。毎日ひとつ、短編をお届けします

資本主義と市場

10 STORIES
ふしぎ約4分で読める

雨は格差を知っている

山頂の気象観測所で、私は全国の雨量データを眺めていた。その日、私は初めて気づいた。雨雲は地形を避けるのではなく、所得を避けているのだと。

2026.10.03 23:08 配信
ぞくっとする約4分で読める

終着駅で犬が吠える夜

終着駅に最後の電車が到着したのは、もう何年前のことだったか。彼は廃線後も線路沿いの詰め所を守り続けており、仕事は、来ない列車を待つことと、野犬に餌をやることだけになっていた。

2026.10.03 09:05 配信
ぞくっとする約5分で読める

勝者の絵の下で鳴く空腹

熱帯低気圧が接近する午後、修復室の空調だけが低い唸りを上げていた。私は倒産した金融グループのコレクションから預かった『凱旋』を前に、画面に乱れて落ちる数字を見ていた。金色の馬と騎手は、まだ二度…

2026.10.03 07:09 配信
切ない約5分で読める

湯けむりの聖地が冷める朝

温泉旅館の板前場は、いつも湯の匂いがする。壁にしみて、布にしみて、指の間にまで滲んでいる。ここへ来て三年になるが、私はいまだに、自分の匂いと湯の匂いを区別できない。窓は高い場所にひとつだけあっ…

2026.10.03 01:07 配信
SF・近未来約3分で読める

夜更けの検車場に微かな音

新造車両は脈動していた。従来型の車体に組み込まれた制御基板が、夜ごと静かに、かつ確かに学習していく。彼は検車灯の下で、その呼吸を確かめるように日記をつけていた。

2026.10.02 05:05 配信
SF・近未来約3分で読める

高い畑で、種は眠らない

このビルの最上階は、 thirty階建ての屋上に耕された畑だった。就業時間は日没まで。それ以上遅くなると、夜の街が畑を見下ろす側と見上げる側の区別を失うからだ。

2026.09.30 15:11 配信
切ない約4分で読める

湯けむりは、配当を知っていた

俺の仕事は、板前場の隅で皿を洗うことだ。仕込みの包丁の音、出汁の匂い、湯上がりの客の笑い声が壁を隔てて漏れてくる。この旅館は百二十年続いたが、三年前、大手の観光資本に買われた。看板はそのまま、…

2026.09.30 05:07 配信
ふしぎ約4分で読める

冷却水のなかで桜は咲く

午前二時、印刷工場の気温は三十四度だった。冷房はこの部屋の熱を奪うだけで、機械の熱はどこか遠くへ捨てられている。夜勤の彼は綴じ機の前に立ち、流れてくる紙の束を見ている。束はまだ温かい。刷られた…

2026.09.28 09:08 配信
ふしぎ約3分で読める

見えない荷物の数え方

仕分けラインの監視係の彼は、入荷した重量と出荷した重量を毎晩照合していた。誤差は常に同じ方向に傾いていた。行方不明になるのは、全体のおよそ十五パーセント。誰も気にしなかった。

2026.09.28 03:04 配信
ぞくっとする約4分で読める

修復室に残した爪痕

修復室は地下二階だった。防音のためではなく、温度と湿度を一定に保つためだが、結果として、そこには世界の音が届かない。彼女は朝九時にカードキーをかざし、白いガウンに袖を通す。

2026.09.27 17:05 配信