ショートショート
夜の水槽で魚は走る
午前二時、巨大水槽の前をパトロールするのが彼の仕事だった。客のいない水族館は、静かなほうが正しい。だが、その夜、総水量千トンの海を背負った水槽の中で、サバの群れが泳ぐのをやめ、全員が同じ方向を…
午前二時、巨大水槽の前をパトロールするのが彼の仕事だった。客のいない水族館は、静かなほうが正しい。だが、その夜、総水量千トンの海を背負った水槽の中で、サバの群れが泳ぐのをやめ、全員が同じ方向を…
コンビニ店員の彼は、スタジアムのガラス越しに、遠い日の熱気を思い描いていた。しかし、そこに映るのは、幾層にも重ねられた広告の光と、誰も気に留めない無数の「効率化」のサインだけだった。まるで、夢…
自動売店の前に立つコンビニ店員の彼は、最新の「最適化アルゴリズム」が示す生活パターンを眺めていた。誰もが消費のレールの上を歩き、逸脱したデータは即座にシステムから排除される。空調の効きすぎたシ…
コンビニのレジ前。店員が提示した「割引コード」が、今日の空の色と妙にシンクロしていた。まるで、システムが疲れて吐き出した残像のようだ。誰もそれに気づかない。それが、一番の異質だった。