S²/365

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最終決済

タナカ主任技師は、軌道工場「オリオン17」の管制室で、いつものように終業処理をしていた。隣では、若手のスズキが地球へのシャトル便の時刻を気にしている。夕方の帰宅ラッシュだった。多くの作業員が、一日の疲れを癒やすべく地球へ戻る準備を始めていた...
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生命の扉

K氏は古びた倉庫の片付けをしていた。相続した広い屋敷の、忘れ去られていた一角だった。埃まみれの奥で、K氏は奇妙なものを見つけた。壁に埋め込まれた小さな木製の扉。手のひらほどの大きさで、まるで汗をかいているかのように湿っていた。K氏が触れると...
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眩しい時計塔

タナカはいつもの通勤電車に揺られていた。今日の朝刊は昨日の失敗談で埋め尽くされているかのようだった。締め切りに間に合わなかった企画書。上司からの冷たい視線。タナカは深い溜息をついた。街の中心にそびえる時計塔が、今日はやけに眩しく見えた。普段...
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時を止めた発電所

深夜、反物質発電所は静寂に包まれていた。タナカとサイトウは夜勤の定時巡回を終え、監視室でコーヒーを飲んでいた。計器盤の数値はすべて正常。膨大なエネルギーが、常に一定に供給されている。「相変わらず眠いですね、先輩」サイトウが大きくあくびをした...
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認識の陥穽

K氏はA助手を伴い、古びた屋敷の庭に立っていた。「この古井戸を綺麗にするのが今日の仕事だ」K氏は指示した。夕刻が近づくにつれ、西日が庭石に長く影を落としていた。A助手は滑車を点検し、K氏は道具袋を広げた。井戸の底には、長年の間に堆積した泥と...
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運命の書架

タナカ氏は、町立図書館の禁書庫で働いていた。埃と古書の匂いが充満する、静かな場所だ。彼の仕事は、一般には公開されない古い書物を整理し、管理することだった。そこは時が止まったかのような空間で、タナカ氏の毎日は穏やかに過ぎていった。ある昼下がり...
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写らない朝

A-さんは、最新のデジタルカメラを常に手放さない写真愛好家だった。友人であるB-くんに、ある奇妙な噂を打ち明けた。「郊外の古い墓地でね、朝焼けは息をのむほど美しいのに、特定の場所だけ写真に写らないらしいんだ。」B-くんは半信半疑ながらも、「...
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真夜中の自動販売機

Kさんは、深夜の残業を終えると、いつも決まった自動販売機に立ち寄った。街灯の下、煌々と光るその四角い箱は、彼女にとって小さな慰めだった。いつものように、微糖コーヒーのボタンを押す。「カラン」と軽快な音と共に、缶が取り出し口へ転がり出た。しか...
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黄金の廃墟ホテル

K氏、M氏、S氏、そしてあなたは、夕暮れの廃ホテルへと向かっていた。黄金に染まるというその建物は、遠くから見ても異様な存在感を放っていた。K氏は最新のカメラを首から下げ、すでに興奮気味だ。「この光の色は、まさに幻覚だ」M氏が呟く。S氏は無言...
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予定通りのお客様

昼下がり、マツムラはいつもの薬局へ向かっていた。陽射しがアスファルトに柔らかく落ち、どこか退屈な午後の始まりだった。薬局の看板には、古びた文字で「予定通り薬局」と書かれている。マツムラは定期的に胃薬を買いに訪れていた。特別な症状があるわけで...