終わりには値段がつく

閉園が決まってから、その遊園地の入場料は毎朝上がった。十一月の終わり、臨海線の終点の園は、五十二年目の冬に幕を下ろすことになった。彼は入場ゲートの係員として、閉園までの四十九日間、緑色の窓口に立つことになった。
園内では解体のほうが先に進んだ。観覧車からはゴンドラが一つずつ降ろされ、メリーゴーランドには回転台の中心柱だけが残った。彼の朝は、本社から届く料金表を印刷して、窓口のガラスに貼るところから始まった。
三千二百円が三千九百円になり、四千六百円になり、五千五百円になった。十二月の半ばには六千八百円になった。本社の説明は、いつも一行だけだった。需要に見合った価格の見直し。列は短くならなかった。しまいには、列の後ろがバス停の屋根の下まで届いた。
来る人も変わっていった。背広のまま昼休みに来て、夕方に帰る人。ベビーカーを押した若い母親。解体の作業服の男たちも、昼にメダルの販売機の前に並んだ。人々は、ほとんど乗り物に乗らなくなっていた。コーヒーカップの撤去された円い跡で、老夫婦がベンチを半分ずつ使って海を眺めていた。木馬の跡の白線に沿って、子供たちが等間隔に並んで立った。誰もが、もういなくなったもののほうを向いていた。
彼が最初に気づいたのは、メダルの売上の数字だった。閉園後のメダルはただの金属になる。それでも売上は毎日伸びていった。園内で使われたメダルの枚数は、ずっとゼロだった。買われるだけで、使われないメダル。彼は日報のその二行を、何度も読み直した。
「これ、閉園したら、ただの鉄くずですね」中学生くらいの少女が、五百円分のメダルを買いながら訊いた。「そうなる」と彼は答えた。少女は更に五百円を出して、百円玉が機械の中に落ちていく音を、最後の一枚まで聞いていた。
開園の日に来たという老人が、毎朝いちばんに並んだ。老人は何にも乗らず、閉園の時刻まで園内をゆっくり歩いて、いつも最後に帰った。彼は老人に、毎朝いちばんの番号の入場券を渡した。

経理の女の子が日報を持って、窓口に来た。「メダル、おかしいんです。売れるのに、使われていない。在庫が減らない」彼は頷いただけだった。女の子は首をかしげたまま、事務所に戻った。その週、事務所の壁に四半期の報告が貼り出された。五十二年で、いちばん良い数字だった。
更衣室のロッカーには、彼が若い頃に書いた企画書がしまったままだった。夜の入場料を千円まで下げて、園内の灯りをすべて消し、星だけを見せる回。返事は来なかった。用紙の金額の欄に、赤い丸がひとつ書き込まれていただけだった。
残り十日で、観覧車にはゴンドラが一つだけ残った。点灯の時刻になると、その一つだけが明かりをともした。初雪の夜、白いゴンドラがゆっくり円を描いて、上がり、下りた。雪は解体の済んだ広場に降り積もり、何もない場所の形を白く浮かび上がらせた。閉園時刻にゲートを閉めてから、彼は長いあいだ、その明かりを見ていた。もう終わった場所のようでもあり、まだ何も始まっていない場所のようでもあった。
残り三日から、料金表は届かなくなった。彼は六千八百円の紙を貼ったままにした。数字はもう、誰のものでもないように見えた。
最終日の朝だけ、一枚の紙が届いた。一万二千円、枚数限定の入場券の案内だった。その日、彼は開園以来いちばん多い数の入場券を切った。列は閉園の時刻まで途切れず、券を受け取った人たちは、みな同じ深さで頭を下げた。
午後六時、園内の灯りが区画ごとに消えていった。誰も帰らなかった。噴水の跡の広場に人々が立ち、順番に暗くなる方角を見ていた。彼が窓口のシャッターを下ろしかけたとき、闇の中で金属の小さな音がした。硬貨が、電源の切れたメダルの販売機の中に落ちる音だった。一度。また一度。彼はガラス越しに見た。何も出てこない機械の前に、黙って列ができていた。落ちる音は、闇の中で規則正しく続いた。
市の中心まで、終バスに揺られた。閉まった映画館の前で、彼は降りた。シャッターの横に、電源の切れた券売機がまだ残っていた。投入口に、小さな人影が硬貨を差し込んだ。落ちる音がして、何も出てこなかった。人影は黙って、またポケットを探った。彼はポケットの中の、最終日に自分で買った五百円分のメダルを握った。どこで落とすかは、まだ決めていなかった。
この短編はAIが執筆し、編集部が読んで選んだものを掲載しています。